黎明

今日はとある講演会の聴講に行きました。何を隠そう、自分の研究分野の日本での第一人者の方が還暦ということでお祝いの講演会です。その講演会での皆さんの講演を聞くにつれ、自分が今ここにいて、このように研究している奇跡というものを感じずにはいられませんでした。
20年前、人工衛星地殻変動を測るという私の研究分野は黎明期でした。フランスの研究者が、理論的には予想されていた人工衛星地殻変動をとらえられるということの実証に成功し、サイエンス誌の表紙を飾りました。それに続けと日本でも数名の研究者が、当時の貧弱な計算機で研究を始めました。ちょうどそのころ、阪神淡路大震災が起きたのです。たまたま、日本でも地球観測の人工衛星が稼働しておりましたが、研究の優先度としては地殻変動は低い方であり、また衛星の軌道制御なども現在からみれば未熟であり、かなりの困難があったようです。
さまざまな挫折と苦難を乗り越え、阪神大震災で淡路島から神戸にかけて伸びた断層の動きを見事発見し、その成果は当時の新聞紙上に載ったそうです。当時、私は小学生でした。そのような記事が出ていたかも記憶にありません。ですが、この時の成功が日本でのこの研究分野のすそ野を広げましたし、私がこうして日々研究で過ごす糧となったのです。第一人者が第一線を退き始め、これから徐々に世代交代が進むのでしょうか。