• 第五日

今日がカンボジア旅行の最終日です。アンコールトムという、アンコールワットの二倍拡大コピーみたいな遺跡を見ます。
二倍拡大コピーとはいえ、こちらはアンコールワットの北側に位置し、中心に仏教寺院であるバイヨン寺院を戴いた政治施設です。
アンコールワットヒンドゥー教の寺院として建立されたのに対しバイヨン寺院が仏教なのは、建立した王様の宗旨が違うからなのだそうです。
ディスカバリーチャンネルでは「当時の住民は王が神であると本気で信じていた」と出演した教授が言っていましたが、この二つの寺院を見る限りその考えは誤っている(ないしは当時のクメール人を見下している)と思います。
はたして神が宗旨替えをするものでしょうか?
なんにせよこういう仏教とヒンドゥー教の両立した社会体制というのは非常に興味深いものがあります。
バイヨン寺院は、アンコールワットの第二回廊から内側と同じくらいの大きさですが、キ○ガイのように釈迦の顔が四面に彫られた塔が林立しています。執念と情熱がない交ぜになったような印象を受けました。
ちなみにアンコールトムは、最初のころに修復したフランス人がお間抜けで正しく修復されていない。
完全に死角に入ってるところに精緻なレリーフが彫られていたりとか、途中で階段が途切れていたりとか、文化財に何てことするんだみたいな事態になってます。
歴史資料としてはそれもまたよし、ってとこですかね。

  • とっても気になったこと

空港へ行く前にニャクポアンという遺跡に立ち寄りました。
十二世紀ごろの療養所の跡です。5つの池を十字に並べた点を除けば、建材その他は典型的なアンコール朝の遺跡です。
中央の大池の中心には阿修羅の島をもした小島があります。ヒンドゥー教の伝説には、阿修羅の島から馬に捕まって脱出する商人たちの話があり、それを表したのではないかといわれています。
実際、小島から少しはなれたところには馬に人がしがみついている像があるのですが、構成フランス人が修復する際に前後逆に置きなおしてしまってます。それじゃ阿修羅の島に突入する商人の像になっちまうのですが、伝説を知らない人にはどっちでも良かったのでしょう。
さて、カンボジアに限らず観光地といえばお土産やさんです。
シェムレアップは世界遺産にも登録されている一大観光地なので、例に漏れず遺跡に通じる道路の両脇には農家が小遣い稼ぎのために露天を広げていますし、遺跡の出入り口にはみやげ物店が立ち並び、観光客が現れるや否や子供たちを先頭にいろいろなお土産を売りつけてきます。
誰が教えるのか、アジア人には日本語で、欧米人には英語で絵葉書やTシャツなんかを売りつけてきます。基本的に1〜2ドルで、安値感から外国人が大量にお金を落として行きます。浅ましいものです。
子供の売り子はおおむね小中学生で、着古した服か学校の制服に、ビーチサンダルor裸足です。
このニャクポアン遺跡にも、例によって例のように例のごとく長い参道の途中に小さな露店がありました。
おばさんと女の子が椰子砂糖と木の実を炒ったものを売っていました。
どってことない普通の露店なのですが、私の目を引いたのは売り子の女の子でした。十歳ぐらいだったと思います。
その子は紅をひいていたのです。日本のおしゃまな子供はそれぐらいの年齢で口紅をつけることもあるでしょうが、カンボジアに来て化粧をした子供を見たことはありません。母親らしいおばさんさえつけていないのにその子だけしているというのも妙な話です。
よからぬ想像が脳裏をよぎりましたが、私は無視して遺跡見学に集中することにしました。口紅など気のせいかもしれません。
しかし、遺跡から帰るとき私は自分の想像が思っていたよりも真実に近かったのではないかと感じました。
その口紅の女の子が消えていたのです。
遺跡へと続く参道は長い一本道です。物売りの子供が親の露店からそう遠く離れる道理はありません。ましてや露店は店じまいの準備をしていました。親も手伝わずにその子はどこへいってしまったのでしょう。
勘ぐりすぎかもしれませんが、ひょっとすると彼女は児童売春の被害者だったのかもしれません。
日本のガイドブックでは「その他トラブル」の項に小さく扱われているだけですが、カンボジアの売春は大きな問題になっています。
主な顧客の中に日本人が含まれているのが忌まわしいですが、児ポ法*1成立もあって逮捕者があとを絶たないそうです。
杞憂であって欲しいと思いますが、今の私にはそれを確かめる術がありません。勘違いや早とちりの類であれば良いのですが・・・・・・
こんな人気のない日記で書いても仕方のないことですが、もしアンコールワットへ行かれる方のなかに時間的余裕がある方がいたら、ぜひニャクポアンを見学するついでにその子の消息を教えていただければありがたいです。

*1:児童ポルノ処罰法。これによって児童にたいする合法的な人権侵害は減ったが、法律の目玉であった子供に対する犯罪数の減少という効果はあまり上がっていない模様。最近法改正をして実写だけではなく、漫画やアニメのような絵画にも規制の輪を広げようとしている動きもあるらしい。個人的には無駄だと考えている