• 第四日

さて、この日ようやくにして天下の世界遺産、人類の至宝、クメールの真髄、アンコールワットを見学します。
前にも書きましたが、クメールの寺院は正門を西に向けて建設されているので、大きな建物であればあるほど午後から見学した方が楽しめます。太陽が東側にあると、正門から写真を撮ったときに逆光をもろに喰らってしまうと悲しいですからね。
アンコールワットはとにかく背が高い。中央塔は60メートルもの高さがあり、シェムレアップではこれより高い建物を建ててはいけないと規制されているほどでかい。鉄骨も使わずに石を積み上げただけでここまで大きく出来るものかと思います。地震がない国というのは羨ましいものです。
ところが、前日の日記で書きましたが、寺院は幅の広い堀に囲まれています。堀を渡ると大きな門を抱えた城壁が寺院を守っています。したがって、堀を渡った時点ではあの有名な寺院本体は門に隠れて見えなくなっているのです。あれほど巨大な塔が見えないというのはおかしなものですが、寺院の敷地が横にも広いせいで、本当に隠れてまったく見えないのです。
堀を渡って門をくぐり、初めて遥か先に寺院本体が見えるようになります。
石造りの寺院は歩を進めるごとに大きくなっていきますが、一向にたどり着かないのではないかと考えられるほど遠くにあります。
中央の塔を囲み、4隅に塔を持つ第三回廊。そこから一段下に下がった場所で塔群を包む第二回廊。さらに一段下がった第一回廊。その構造は余りにも巨大でそれなのに秩序を持った、人類の奇蹟なのではないかと思えます。
全体の構図は確かに美しいです。しかし、その詳細を見ると歴史や文化の変遷を学ぶことが出来ます。
第一回廊西面に彫られたレリーフは触れられるのが勿体無いほど美しく掘り込まれています。対照的に東面は未完成でのっぺりした打ちっぱなしの壁があって、アンコールワットが未完成のままであることを教えてくれます。
有名な日本人の落書きの向かいには、清時代の落書きが書かれていたり。落ちてきた石材が積み上げられていたり。真新しい栃木県民の落書きがあったり。
ヨーロッパ系の仏教徒が仏像に線香を上げているという、歴史の変遷を感じさせる場面もありました。