お坊さんは楽譜を読むのです

蝶々夫人におけるボンゾの存在意義は、結婚式を台無しにする以外にないといって過言ではありません。
祝福ムードに水を差し、蝶々さんを転向者として糾弾します。合唱と一緒に。これほど悪目立ちするキャストも珍しいでしょう。そのなかでボンゾという存在を確固として観客に見せねばなりません。
出番は360ページある楽譜のうちで、わずか11ページほど。合唱や他のキャストも歌いますから、ボンゾ一人が歌うのはその中の半分もないでしょう。合唱などとの掛け合いが大切なのに、キャストオーディションで歌うのは、ボンゾ候補一人だけ。
「教会で何をした?」と詰め寄る相手もいなければ、「蝶々さん答えて」という合唱もいません。
「教会で何をした?」のあとは伴奏に合わせて4小節分おやすみして「答えろ。何をした?」。さらに2小節分あけて「なんと冷たい目だ」と、なんだかお休みが多いのです。
ある意味とっても難しいです。ピアニストの人と、何とかして息を合わせないと、気まずいことになります。
そのためにもちゃんと自分のものにしないと……