大学のエレベータ

うちの大学は古くなった校舎を建て増しして、4階建ての建物を12階建てにする粋な大学なのです。しかも、単純に継ぎ足すのではなくて別に基礎を打って古い校舎にかぶせるという「だったら立て直したほうが早くて安いんじゃないの?壊すのがしのばれるなら場所を変えようよ」と思わず突っ込みたくなる粋な大学なのです。
その12階建ての校舎にはエレベータがついており、私と実験班のお仲間合計4人は、12階の教授室で試問を終え、下りのエレベータに乗っておりました。
あたりまえといっちゃ当たり前ですが、途中の階から何人かエレベータに乗ってきました。
1人、更に2人、とどめで数名待っている階から4人乗り込んできました。
ふと気になって人数を数えたところ11名。操作盤のパネルのところには「定員11名、最大積載量750kg」の文字が。
おお!いっぱいだ!
「定員からみればこのエレベータは満員である」という事実に、ほぼ時を同じくして数名が気づきました。
と、そこへ更に一人、小太りの男性が乗り込もうとしてきました。
さて、問題です。12人目の男性が乗り込んだとき、定員超過のブザーは鳴るのでしょうか?
答えは「鳴りません」でした。
早い話、750kgの定員12人ということは、一人当たりの体重は68kgと見積もられているわけでして、運動不足でひょろひょろした人の多い工学部では平均体重がそこまで達しないのです。そして、いくら日本のエレベータが高性能だからといって、何人乗っているかをいちいち数えているわけではないようなのです。


と、ここまでなら何も面白くないのですが、ここからが大学の面白いところ。こうして無事に12人乗れたわけですが、誰かがポツリとつぶやきました。(ホントに口に出してつぶやきました。ちなみに私ではありません。)
「何で750kgで11人なんて割り切れない数なんだろう?」
そう、これが10人や12人だったら、750kgで不自然はないわけです。では定員を11人と中途半端にするその根拠とは。
答えを知っている人がいれば、得意げに語りだすのが学者の悲しい性。
そして、答えを知らなければ押し黙って「後で調べてやろう」と思うのも学者の悲しい性。
エレベータの扉は、得体の知れない重苦しい雰囲気のまま開いたのでした。
ちなみに、数字の根拠は一人65kgとして、幾分か上乗せしたものらしいです。尺貫法かヤードポンド法だと思っていたのですが、残念……