妄想

マイクロウェーブ・ワークショップは本日でお終いです。
研究室の展示の店番なので休むわけにもいきませんが、質問してくる人への説明以外にすることが無いので、お客が来ないと暇で仕方がありません。かといって、他の作業をするわけにもいかず、やむを得ず頭を総動員して妄想にふけってニヤニヤするわけです。
それにしても、私が店番をしているときに限ってお客が来ないのは何ででしょう?


妄想の御題は「斬新なカルメン」。いかにして「こんな舞台にして、一体誰が得するんだ?」というカルメンを何本か作りました。そのうちの何本かを忘れないよう書いておきます。


アメリカナイズド・カルメン
登場人物は軒並みアメリカナイズされている。当然、全員百貫デブである。
ホセはもちろん、竜騎兵隊の面々は全員カウボーイであり、喋らないときは全員ガムを噛んでいる。
ホセはイライラすると飴玉をなめる癖がある。
カエラはギャンブル狂いである。「お母様からお小遣いも預かったの。でも、途中の酒場で全部すっちゃったわ!」という台詞で観客の度肝を抜く。
カルメンは原作どおりの過激なファッションで登場するが、明らかに整形手術に失敗している。コーラとタバコを愛飲しているが、ベジタリアンである。
エスカミリョは見てくれがエルビスプレスリー、歌い方はエミネムである。
ダンカイロはセブンアップの缶を手放せない。「レメンダート!」と叫ぶと盛大なげっぷが混じって「レメンダァ゛ァ゛ァ゛ト!」になる。
レメンダートはm&m'sを四六時中ほおばっている。「モグモグ!モグモグモグ!」m&m'sの破片を撒き散らしながら軽口を叩いているようだが、何を言ってるのか分からない。
メルセデス宅配ピザをこよなく愛しており、三幕の「税関吏などお手の物」の直前にわざわざピザ屋の出前が来るほどである。
フラスキータは訴訟魔でことあるごとに告訴状を掲げる。
リリャス・パスティアはどー見てもカーネルおじさんである。


兄弟カルメン
実はカルメンとホセは兄弟だった!とホセが勘違いする筋立て。
ホセとカルメンがタバコ工場でであったとき、カルメンが投げたのはサルビアの花。花言葉は「家族愛」。
何を勘違いしたのかホセはカルメンのことを生き別れた妹だと思い込んでしまい、一幕でカルメンを逃がしたのは兄としての義務感からということになってしまう。
もちろん、全ての「Je t'aime」はホセ→カルメンに限って兄弟愛という意味になってしまう。
無論、その後もしつこくカルメンに付きまとうのは妹の素行を改めようとする健気な動機からである。


茶の間カルメン
舞台の奥、ホリゾントの手前が一段高くなっており、コタツにみかんが山盛りの状態である。
出番のないキャストがどてらを着てコタツの中に入り、テレビの中、すなわち舞台で繰り広げられるドラマを見るという。
それだけ。
「ドラマはエンタテイメントであると同時に、視聴者自身を映す鏡でもある」という深遠なメッセージが込められているのだが、理解されないかもしれない。


今週の図書館から借りてきたCD
メシアントゥーランガリラ交響曲ルトスワフスキ管弦楽のための協奏曲(フランス国立放送フィル、ヤノフスキ)
ムソルグスキー展覧会の絵ラヴェルボレロ、ラ・ヴァルス、道化師の朝の歌(クリーヴランド管弦楽団、ドホナーニ)
フィンジ:クラリネット協奏曲作品31、弦楽オーケストラのためのロマンス、ノクターン「新年の音楽」、カンタータ「クリスマス」(セントマーティン・イン・ザ・フィールズ、ネヴィル・マリナー
ブラームスヴィオラソナタ作品120.1と2、二つの歌作品91(ハーゲン、グルダ