ブランコぶんぶん

奥田英郎のの「イン・ザ・プール」と「空中ブランコ」を読みました。
基本的には伊良部という奇矯な精神科医の元に患者がやってきては、彼の予測不可能な行動にむしろ患者の側が振り回されてさいごにめでたく関知してめでたしめでたしという短編小説。
それだけ、ならば水戸黄門精神科医で終わってしまうのですが、どっこいこれが直木賞をも物にするにはわけがある。
まず一つとして、患者それぞれが持つ現代の悩みが良く描かれている。
人はそれぞれ生まれてからこの方、それぞれの人生を歩んできたわけで、どこかに変調をきたすと途端に不安定になる。旅にでもひと月行ってしまえばスッキリするわけですが、あいにくと余裕のない現代人はまとまった休みも取れずに追い立てられるような毎日を送らねばならないわけです。患者一人一人の背景としては特に書かれていないですが、誰一人「旅にでも出るか」と言い出さないところを見れば、登場人物たちには振って沸いた壁を相手に「逃げる」「迂回する」という選択肢はないようです。かといって、問題の原因を正面から抜くこともできず*1、にっちもさっちも行かなくなっている人、という感じ。
自信があったりプライドを持っていたりする分野にイレギュラーが入り、しかもそこから逃げられないような状況、というほどのものでしょうか。一言で言えば、ローカルミニマムに陥っている。
で、我らが伊良部先生は患者がそういった無事に壁を攻略できるように活躍されるわけです。とっぴで、全く作為性が感じられない行動が、読者の心をつかんで放さないのでしょう。






上とは全く関係ありません。
景気は底を打ったらしいです。
私たちがゴールデンウィークを満喫している間、世間では株価が上がりまくってとうとうニューヨークダウが8500を突破するとかしないとか。
海の向こうでは猫も杓子も「景気はそこを打った。後は上がるだけだ」と思っているらしいです。
しかし、クライスラーがつぶれ、GMも株式の数を100倍に薄めて国営化しそうなどなど、先行きの不透明感はこれからのような気がしないでもありません。とゆーか、私の記憶が正しければ、日本で言う失われた10年のうち、企業が潰れまくってから浮き上がるのに時間がかかった記憶があります。
いくら歴史から学んだにせよ早手回しがすぎるような気がします。
そもそも、会社が傾きだしてリストラにあった失業者の皆さんはどこへ消えてしまったのでしょう?それだけ購買力が減っているはずなのですが。
どうも極小値であって最小値ではないような気がして仕方がないです。
いずれにせよ、私が就活する時期には1次微分も2次微分も傾きが正であって欲しいものです。

*1:実力的に突破できない、というよりも、それが原因とは認めたくないとか、ストレスから視野狭窄に陥っているとかいうケースが当てはまります。