交通事情

以前コメントで移動について質問があったので、ボスニア・ヘルツェゴビナおよび旧ユーゴ圏の交通事情についてまとめてみようかと思い立ちました。
なお、これは私の実体験や印象に基づいた2009年現在の私の経験則であり、場所や時期によって事情はまったく異なる可能性があります。これを当てにして失敗しても私は関知しません。「全然違うじゃないかー」というツッコミは情報の正確さを高めるためにむしろ大歓迎です。


全般
旧ユーゴ圏の移動で一番大変なのは「英語が通じない」ということです。
もちろん、世界遺産などがあって観光客が頻繁に訪れる地域であれば英語が通じる場合もありますが、それを当てにしてはいけません。首都のバスターミナルでも、ほとんど英語を解さない人に当たってしまう可能性があります。ましてや、地方のバスターミナルをや。ちなみに、バニャ・ルカのバスターミナルのおっちゃんたちは全く英語をしゃべれません。
セルビア語はロシア語、ポーランド語と親戚関係にありますが、ネイティブ同士でもお互いの会話は何を言ってるのかわからんらしいので、セルビア語をしゃべれない人は基本的に英語を話せる人を探すか、紙に字を書いてこちらの意思を伝えるしかありません。ラテン文字は通じるので、欠航や事故など特殊な事態が発生したりしない限りどうにかなります。


航空機編
旧ユーゴ圏の移動に航空機はあまりお勧めできません。
長距離バスが毎日運航されているため、ただでさえ空港という都市中心部から離れた位置に到着する航空機は、移動手段としてあまり認知されていません。便数も週に3便といった程度で、しかも遅延は当然、下手をすれば予告なく欠航となるため、使うとすればヨーロッパから旧ユーゴ圏へ出入りするときくらいにしましょう。
セルビアならベオグラードボスニアならサラエボクロアチアならザグレブかドブロヴニクといった感じに、目的地に近い空港からバルカン半島入りし、そこで一泊して、そこから先は他の交通機関を使うとよいです。
なお、あんまりにも飛行機を使う人が少ないせいで、場所によっては空港から最寄りの都市まで公共交通機関がない場合もあります。その場合はタクシーに乗るか、車で拾いに来てくれる宿屋を探しましょう。


鉄道編
旧ユーゴ圏の移動に鉄道はあまりお勧めできません。
旧ユーゴの鉄道は軒並み国鉄であり、しかも貨物輸送主体のため、旅客便はあまり出ていません。24時間営業のくせに上り下り合わせても24本も発着しない駅とか、普通にあります。事前に鉄道会社のウェブページでダイヤを確認してスケジュールを組みましょう。それでも遅延は当然のようにあるので、時刻表トリックにチャレンジするのはよしましょう。逆に、線路はつながっていても会社同士の境界で運行系統が分かれており、直通の電車も機関車をつなぎ換えたりして長時間停車したりするので、窮屈なバスの旅を嫌ってのんびり旅行をする人には良い移動手段かもしれません。
駅名を車内放送したりはしないので、終着駅以外で下車する場合は車掌さんに聞いてみるなりなんなりしましょう。途中駅の中にはホームがないものも多く、すれ違いのために止まったのか駅だから停まったのか判然としない場所もあります。もっとも、プラットホームといっても列車用なので線路と大して違わない高さしかないのです。重たいトランクを引きずって乗り降りするのは大変かもしれません。
そんな鉄道にもメリットはあります。2等車でも6人掛けの個室なので割と広々しています。道路と違って急カーブもないので乗り心地も良いです。しかも学割が3割引なのでバスより「ちょっと」お得です。もっとも、夜行便であっても毛布が貸し出されたりとか、暖房がついたりとかはしないので、夜行便に乗る場合は上着を準備しましょう。夏でも夜中には15度くらいまで下がります。


バス編
この国の長距離移動手段は、基本的に長距離バスといってもよいです。大都市間は一日数便運航されておりますし、地方都市へも主要都市から一日に1便は出ています。ダイヤについては鉄道や航空機に比べれば正確です。ただし、程度の問題であって30分の遅れなどは当然のようにあるので、時刻表トリックはよしましょう。
バスは全部民営なので、同じ都市を結んでいる2本のバスであっても経由地が違う場合があり、当然のことながら移動時間も異なるので、事前の確認が大切です。経由する都市は同じでも下車のみだったり、そもそも止まらなかったりもします。
それなりの規模がある町にはバスターミナルがありますが、クロアチアプリトヴィツェ湖のようにバス停しかない場所もあり、そういうところではバスの時間を聞いて念のために少し早めにバス停に行き、止まってくれるバスが来るまで辛抱強く待ちましょう。バス停にはダイヤが掲示されていたりとかはしません。
また、基本的に同じ民族の居住地を結ぶように路線を組んであるので、ボスニアのように他民族が入り混じっている国は、民族境界を越える移動の場合、近距離でもやたらと時間がかかるので、余裕のある計画を組んだ方がよいです。国境を越える移動に際しては身元確認で時間がかかる場合もあります。国境審査で目をつけられるのは、40〜50代の地元のおっちゃんや外国人です。外国人はどこの国でも不審がられるからで、地元のおっちゃんたちは内戦時の民族浄化で加害者側にいた疑惑がつきまとっているためですね。くわばらくわばら。


レンタカー編
私はやったことがないのでわかりませんが、数人の仲間とレンタカーを借りて移動するというのも手段としてはありだと思います。公共交通機関は使えるとはいえ当てにならないので、自分で移動するという考えには共感を覚えます。
この場合、きちんとしたロードマップを持っていないと、確実に道に迷います。道路標識は日本と同じですが、案内標識は日本と逆で遠くの目的地の方が下に書かれており、場合によっては省略されてしまうので、迅速な移動にはナビ役が必須です。幹線道路でも片側一車線の曲がりくねった山道だったりとかはざらであり、そんなところを長距離バスやトラックが80キロくらいで走っています。一方で整備不良の車が30キロくらいで走っていたりもするので、車間距離などには十分気をつけましょう。
当然のように荒っぽい運転の人が多いですし、マニュアル車しかないのでそのあたりを十分予想して快適な移動をすればよいのではないでしょうか。