最後の週末

いよいよ最後の週末になってしまいました。
これまで、IAESTEボスニアで企画してくれた旅行はベオグラードサラエボ、私自身で企画した旅行もザグレブやスタリー・モストといった、世界遺産などのあるメジャーどころでした。
今回は、せっかく最後の週末だしこの地方の交通事情にも慣れてきたことだしというわけで、こちらの地方の人たちがお勧めの旅先へ行ってみることにします。もっとも、地球の歩き方やヨーロッパのガイドブックでもページを割いている旅先なので、完全にマイナーというわけではありませんが。
そんな動機で決めた行先は、ボスニア中西部のウジツェ、ズラティボル、モクラ・ゴラの3か所。それぞれ、40キロくらいの距離にあるので、2日で回ってしまおうという強行軍です。
バニャ・ルカからウジツェ行きのバスが出ているのですが、発車時刻が勤務時間とかぶっているので、ベオグラードを経由していくルートを取りました。決して最短でも最速でもないのですが、オンラインでバスの時刻を調べられるのは、ベオグラードなどの限られた都市しかないので、しかたありません。IAESTEの学生に頼んでもよかったのでしょうが、彼らも9月で試験シーズンなので、手間をかけさせたくないですし。
というわけで、業務が終わった直後の5時、23時ベオグラード着のバスに乗っていきます。週末はベオグラードで過ごすという人なのか、バスの乗車率はかなりのもの。・・・と思ったらクロアチア国境手前のバス停で大量に降車。長距離バスといっても直行便とは限らず、たまに途中の町のバス停に寄って行くので、そういうこともあります。そして、私のバスはそのままクロアチアへ渡り、高速で一路東へ。バニャ・ルカからベオグラードへは、一度クロアチアに出てザグレブ-ベオグラードを結ぶ高速を使った方が早いのです。ボスニア国内を延々と東に向かってセルビアに入る便もあり、揺れる片側一車線の道路で、途中の町をいちいち経由していくので、あまりよく眠れません。
しかし、この国境ゲート通過というのが曲者で、時間帯と場所、そして警察官の性格によって必要な時間が全く変わってしまいます。
一番早いのが「はいみなさんIDカード*1かパスポートを見せてください」と言ってそのまま車内で確認してしまう人。この場合、10分くらいで国境を通過してしまいます。ボスニア南西部の唯一の海岸地帯ネウムとクロアチアの国境ではそんな感じです。
次に時間がかかるのが、怪しそうな人や外国人のパスポートを取り上げて近くの小屋で検査する人。この場合は、警察官がどれくらい熱心かによって取り上げられるパスポートの数が変わってきます。人によっては乗客全員のパスポートを取り上げて機械で検査します。
多分、一番時間がかかるのが、乗客を一度全員バスから降ろして普通に国境審査をする人。割と時間がかかります。前のバスが使えて40分近く待たされたこともありました。
番外として、出国審査で車掌のおっちゃんと警察官が「通っていい?」「おっけー!」で済んでしまったというのも一度ありました。


さて、そんなこんなで国境を越え、快適な高速道路でベオグラードに到着。
たいていの人はここから宿に向かうか、深夜発の別のバスに乗るのですが、私はベオグラード午前3時15分発の夜行列車でウジツェに向かいます。鉄道の魅力は、何と言ってもバスほど揺れない広くて快適な居住性と、値段の安さです。地域や列車の種別にもよりますが、4分の1から半額程度になるものもあります。学割も確実に効くので便利です。長距離バスは私営だと学割がない場合もあります。
ベオグラードからウジツェまでは、各駅停車で4時間と少し。無事、八時前には朝靄にけぶるウジツェに到着しました。時刻表からは20分遅れなので、時間どおりです*2
ウジツェの町は第二次世界大戦中、チトー率いるパルチザンが解放した地域の中心部であり、その歴史的意義からボスニアの、少なくともスルプスカ共和国の学生たちには「ぜひ行くべきだ」と勧められます。もっとも、街そのものはあまり大きくない山間の盆地です。町の片方の端に博物館があり、ホチキスが置かれています。

残念ながら管理人らしいポロシャツのおっちゃんはやる気が全くなく、私が扉をあけるまで明かりをつけず私が出ていくと電気を消していました。それどころか2棟ある建物の一方しか見せてくれないという横暴っぷりでした。はるばる日本から来てやったのに・・・。
反対側の山の中には、オスマン・トルコ時代の城塞があります。風化が目立ち、案内板も落書きだらけ、ゴミと雑草で見るも無残ですが、町の眺めは結構いいです。ここに展望台でもおけばいいのに、と思います。

午後はここからバスで40分、標高1000メートルの高原地帯、ズラティボルに向かいます。
ここはセルビアの軽井沢とも呼ばれる*3地域で、冬はスキー、夏はハイキングなどで自然を満喫するため、ペンションやホテルが山ほどあります。また、バス停の近くにバザールがあり、特産の乳製品やセーターが売られています。
たまたまレンタサイクルを見かけた*4のでちょっと遠出してみることに。

道路を渡って丘に登るとこの景色!

何もないよー!


この日は、ズラティボルに泊りました。最後の週末だしということで、ボスニアでもらった月給の4分の1をはたいて普通のホテルに宿泊。
すごい!明かりが全部点くし、トイレの便座はガタガタしないし、床には煙草の焦げ跡もないし、テレビは映るし、インターネットもできるし、夕食と朝食がビュッフェですよ!さすがチトー時代の建物を流用したユースホステルとかとは格が違います。

*1:ボスニア国籍の人はIDカードを見せるだけで旧ユーゴ圏を行き来できる。ただし、そこから外はサラエボまで行ってビザを取得せねばならない。大変だ。

*2:矛盾する表現だが、この国ではバスも列車も30分遅れくらいまでなら時間通り。その倍遅れてちょっと遅れた。という感覚。私はそれより遅れたことはない。

*3:勝手に命名

*4:モータリゼーションが進んでいるせいで、レンタサイクルはあまり見ない。