腰パン

去年の夏にボスニアに行くまで知らなかったのですが、腰パン専用のズボンというか、ずり下げてはくのがデフォルトのズボンがあるのです。
股下が60センチも無いくせに、股上が50センチくらいあるのです。膝上5センチくらいで早くも股が閉じてしまうのですが、それでも腰の位置にベルトが着ます。「Revolution Girls」のロゴと女体化ゲバラのTシャツを着た鼻ピアスのスペイン娘が履いていて、これは格好いいと感じたのを覚えています。
それがフォーマルな着こなしであるために、退廃的であると同時にだらしなさを感じさせないのです。


それに引き換え、どこかの国のオリンピック選手が公式の制服を着崩し、ネクタイはダラダラ、ワイシャツはズルズル、あまつさえ腰パン状態と、まるでトイレから慌てて出てきたようなダサい格好で空港に現れ、顰蹙を食らったそうです。
こちらの場合は、なまじ制服のスーツにまで自分のファッションセンスを適用しようとして、誤った着方をしたから格好悪く見えるのだと思います。他人の服装をとやかく言う趣味はありませんが、統一美を前提とするユニフォーム、ましてやきちんと着こなすことを前提としたスーツなので、たとえ太平洋横断の長丁場であっても、人前に出る際にはピシッと着ていて欲しかったです。さもなくば、一思いに制服を脱ぎ捨てて私服で移動するべきではなかったでしょうか。
もし彼が、制服改造の要領でズボンを腰パン専用スタイルにし、もっとワイシャツの胸を開き、ネクタイではなく金鎖のネックレスにし、ヘラヘラ笑わずにサングラス越しにガンを飛ばして歩いていれば、あるいは文句は来なかったかもしれません。
服装の乱れ自体が「日本の恥」かどうかは知りませんし、試合に出るなとか日本に帰ってくるなとか、そういう反応を返すだけの価値があるかすら分かりません。
記者会見などでの態度を見る限り、本人に反省の気持ちは余りなさそうですが、逆にそれだけを理由にいつまでも尾を引くべき問題とは、私は思えません。二十歳を過ぎてTPOとかそういうものに価値を見出せないように育ってしまった以上、本人に態度を改めてもらう期待はもてませんし、彼自身がTPOを弁えないためにこうむる損害は、周囲がそれを許容せざるを得ないだけの価値を本人が身につけることによって補填されるでしょうから、誰も損をしないのです。服装の乱れた選手は日本の恥だというならば、そんな選手を交代させられないという選手層の薄さの方が日本の恥でしょう*1

*1:大抵、態度の悪い人間は普段から態度が悪いのだから、代わりが居るなら最初からそっちを選んでいるはずではないでしょうか。