逆転ピンチ

以前、工学部のキャンパスを歩いていたときに「逆転ピンチ研究室」「逆転ピンチ実験室」なる札を見つけたことがあります。なにやら物理学の現象なのですが、どう見ても突然状況が悪い方向に転がったようにしか思えません。
で、今日は私が逆転ピンチに陥りました。


論文のrevise(これ直したら雑誌に載せてあげてもいいんだぜ)をやっていて、来週の金曜日が締め切りなのですが、教授との話し合いで今日、修正した論文を提出することになっていました。というのも、来週の月火と私がスキーで不在になり、水木と教授が学会で不在となるので、来週は金曜日まで顔をあわせられないのです。特に滞りも無く指摘された箇所を訂正したり再実験したりし、私が書いた拙い原稿を教授が真っ赤にし、私が涙目で書き直しを繰り返した結果、いよいよ今日、提出という運びになりました。
さて、現行の9割9部は完成し、あとは最後のチェックを終えればいよいよ提出・・・となったそのとき!
悲劇は起きたのです。


revise は、主に2つのパートからなります。
一つは、全体的な感想で「この論文は、これこれこういう内容で、興味深い結果を書いているように思える。けれど、これこれこういうところに不備があるように見えるので、具体的にこれから書くところを直しなさい」みたいなことが書いてあります。
もう一つは、その具体的に書かれた指摘の部分で「このページのこの式は記号が違うように見える」「この図は何が書いてあるのか分からない」みたいなことが番号を振って書かれているのです。
大抵、全体的な話の部分と具体的なツッコミはリンクしているのですが、全体的な部分でチラッと触れただけで、具体的には指摘されていないツッコミを教授が発見。というか、私はその部分を読んで、具体的なツッコミの中に「それっぽい」記述を見つけたので放置していたのですが、文脈からすると、確かに別個の問題として扱わねばならない可能性もあります。別個の問題として扱うのであれば、これから再実験する必要があります。
提出先は学術誌の特別号なので、締め切りを逃すと次はありません。とはいえ、指摘された箇所をきちんと直さずに提出してreject(ボツ)を食らったら元も子もありません。
やむなく、再実験。


ちなみに、今日は自衛隊の音楽まつりがあって、それの入場券を偶然入手していたのですが・・・
・・・計算機がうんうんうなっている隙に行って来ることにしました。



自衛隊の音楽まつりといえば、普通はウェブサイトとかにも大きく告知が出ているものなのですが、今日の音楽まつりに限っては、なぜかそういうものがありませんでした。会場に着いて初めて分かったのですが、今日の音楽まつりは「入隊・入校予定者激励会」と副題がついていました。つまり、壮行会だから客はある程度決まっているのです。
激励会なので、北沢防衛大臣と石原東京都知事の激励ビデオメッセージが流れました。北沢大臣のメッセージはよく言えば当たり障りの無い、悪く言えば平凡な挨拶。石原知事のメッセージは石原知事らしい言いたい放題。「軍隊、今は仕方なく自衛隊と名乗ってますけど」とか「日本がオリンピックで弱いのは国を背負ってないから」とか。まあ、好きな人には聞いていて気持ちいいことをべらべらっとしゃべっていましたが、激励のメッセージで文句を垂れたり他人をけなしたりするのは、個人的には余り好きではありません*1。ちなみに、石原知事の次のビデオメッセージは、オリンピックでレスリング2連覇の吉田沙保里選手からのものでした。
続いて、先輩隊員からの激励メッセージ。なかなか音楽まつりが始まってくれません。舞台上には陸海空から合計4人出てきました。海自の代表の人のトークが上手すぎて、その前に喋らされた陸自の2人が目劣りしてしまったのが残念でした。空自の人は普通に受け答えできていただけに、なおさら上手く喋れなかった2人が哀れに感じられます。
その後、ようやく私にとって本命の音楽祭。最初は朝霞振武太鼓として和太鼓の演奏が3曲。低音で床が響いてかっちょ良かったです。言い方が悪いかもしれないが、血がたぎるエネルギッシュな演奏でした。
15分の休憩を挟んで、海自東京音楽隊吹奏楽マーチ。もちろん最初の一曲は「軍艦」。リンクを貼った動画よりは、だいぶ腰の落ち着いた演奏でした。

二番目の「凱旋」

『勝った勝った勝った〜また勝った〜♪』という端にも棒にもかからない歌詞をとっさに思いつきましたが、きっともっとマシな歌詞があると思います。
三曲目の「空の精鋭」

これは吹奏楽もいいですけど、管弦楽でやってもいけそうな気がします。
続いて、故郷によるパラフレーズ。「うーさーぎーおーいしー♪」から始まっていろんなアレンジが出てきました。途中から4拍子とか5拍子が混じった気がします。ラヴェルボレロとに似せたアレンジもあり、楽しかったです。
この音楽隊には去年初めてピアニストとヴォーカルが入ったらしいのですが、そのヴォーカルの人は自衛隊員にしておくのがもったいないくらい良い声でした。アンジェラ・アキの手紙を歌ってたけど、高音の伸びが好み。
そのあと必殺仕事人のメドレーと刑事ドラマのメドレーが流れました。これ、選曲したのいい年したおっちゃんだと思います。
最後に、我は海の子のフレーズで〆。アンコールは2曲。曲名忘れたけど有名。さすが軍隊だけあって楽しい演奏会でした。最後はマーチに乗って楽団員が退場して行くのですが、最後に残ったチューバがユーモラスでおいしかったです。



急いで研究室にとって返し。
計算結果が出ていたのでなんやかんや編集し、教授のところへ持って行きます。
こんな数字が出ましたけど、といってどう書き直す論文に繁栄させるかを相談します。
教授に「短時間でよくここまでやりましたねぇ」と褒められましたが、音楽まつりに行ってきた手前、言外に「何で普段はダラダラしてるんですか?」と問われているような気がして仕方がありません。


ちなみに、うちの研究室の教授は、多くの学生から「優しい(ぬるい)教授」という認識で見られていますが、事実は異なります。物腰が柔らかく、婉曲表現が多いのでそう見られますが、一年も研究室にいると、教授の笑顔のパターンが細分化されて、気持ちが読み取れるようになります。
教授にとって「それはぜひやりましょう」というのは「それをやりなさい」と同義であり、「それはぜひやってください」というのは「つべこべ言わずにやりなさい」と同義なのです。同様に、いい加減な仕事をすると柔らかく怒られます。
くどいようですが、来週の月火と私がスキーで不在になり、水木と教授が学会で不在となるので、来週は金曜日まで顔をあわせられないのです。早いところ原稿を書き上げなければなりません。焦る余り、「終電だから」と帰ろうとする教授に、エレベータの中までついていって原稿の下書きを読ませてしまいました。酷い学生もいたもんです。

*1:私の記憶が正しければ、オリンピックには自衛隊員も参加していたはずです。