一足先に旅立ってた君に

10時半開始の葬儀の予定を聞かされたのは、僅か30分前のことだった。
その時間で身なりを十分に整えるのは無理だったが、場所は隣の教会だった。
これが遠方であったらと思うと、わが身の幸運を感じずにはいられない。
教会の友人、という以上の関係ではない。
しかし、彼女の葬儀に立ち会わぬ自分など、考えられない。
それほどの親しさではあった。
21歳の彼女は、大学に向かう途上で突然倒れ、帰らぬ人となったのだという。
一人娘を失った彼女のご両親の悲しみなど、想像できない。
そもそも、私が彼女の死を受け入れられない。
病気や事故ならば、どれほど理不尽な死であろうとも、そこには理由がある。
しかし、外傷も無く既往症も無く、死因不明では、全く納得がいかない。
そこにはただ、死という事実しか残されていない。


旅立ってしまった君に、もう私は何もできない。
君の分まで生きると、勝手に誓うまでだ。
なんらの落ち度も無く生きていた彼女を、神は何を思い、召し出したのか。
理不尽に過ぎる。
だから私は、君の分まで生きると、勝手に誓う。