不謹慎ネタをどう盛り上げるか

BBCが被爆者をお笑いクイズ番組で取り上げたのだそうです。で、一部界隈が盛り上がってるので、野次馬。
幸いにして動画を見つけたのでちょっと見てみます。

・・・うーん・・・不謹慎レベルでいったら気に障ったらごめんなさい程度で済むような物な気がするのですが、どうなんでしょう。

意訳、誤訳、端折り等はいっぱいあることは先に断っておいて、内容を書き出してみます。発言者の違いは「司会」と、出演者のアロハの色で区別してあります。(追記:と思ったら、専門の方がこちらで訳出していた。こっちの方が多分正しい。私もここまで聞き取れたらなぁ・・・自分のと比べるとだいぶ違ってびっくり)

司会「さて、それでは『この世で最も幸運ないしは不幸な人間』とは誰でしょう?・・・この人ではないですよ。迷信の一覧ね(背景のポンチ絵のこと)」
青「蹄鉄で殺された人*1?」
(笑い)
司会「あー・・・いや、この人は、見方によっては最も幸運だし、最も不幸ともとれる人なんです。つまり・・・」
緑「なんかすげぇ事件とか事故とかに遭って生き延びた人みたいな?」
司会「そう。良く考えてね!ある国の"H"で始まる都市に居た人。名前がヒントになるでしょう。その人は"ツトム ヤマグチ*2"さん。2010年1月に93歳で亡くなりました。長生きですね。そういう意味では幸運だ」
赤「で、そのヤマグチさんてひとが"H"」
司会「・・・で始まるところから」
赤「H...H...オランダ*3?」
(笑い)
司会「も、もうちょっと正しそうなところを言いましょうよ」
緑(?)「日本だね」
司会「そう!日本!日本の"H"で始まる場所」
赤(?)「北海道?」
緑・青「広島だ」
黄「彼は・・・つまり・・・(首を振りながら)」
緑「爆撃されたわけだ。ビッグバン級の奴に*4
(笑い)
司会「彼は仕事で広島に来ていたのです。爆弾が爆発したそのときに。そして大火傷を負って入院し」
緑「で、長崎の病院に担ぎこまれたわけだ」
(笑い、背景が山口さんとキノコ雲に転換)
司会「次の日に・・・って君!正解だよ!なんと爆弾を落とされたっていうのに、鉄道が動いてたんだよ*5。彼は列車に乗り、長崎に行っちゃったわけだ。そこに爆弾がまた落ちる、と」
(笑い)
司会「彼はある種の英雄になったんだ。90歳になってから国にこのことが認知された*6。彼は100人以上の同じ、あるいは似たような体験をした人と会ってネットワークを作って元気に93まで生きたんだよ」
赤「写真だとそこまで元気じゃなさそうだけどね」
(笑い)
司会「そりゃこの写真はきのこ雲に挟まれてるからね」
赤「なんて運命だよ!」
司会「おどろきだよね。彼は二回生き延びたって意味では幸運だったんだ」
赤「長生きもしたしねぇ」
黄「つまるところ、グラス半分の水ってわけだ*7。どっちにせよ放射能を帯びてるんだけどさ*8
(笑い)
黄「飲んじゃダメだね」
緑「列車には乗れなくなったんじゃない?」<以下2011/1/22に一晩寝てからゆっくり聞きなおしてみました>
司会「私が驚いたのはね、核が落ちたのに鉄道が動いてたってことだよ。我が国だったら・・・」
緑「慌てずに行こう!*9
赤「神のお慈悲を*10ってなるねぇ」
司会「そうそう。冬の間じゅう・・・
赤「間違った種類の爆弾だよ!ありゃあ・・・間違った種類の爆弾が降ってる*11よ!」
(笑い)
司会「正しい種類の爆弾*12とされてたんだけどねぇ」
赤「(口を手で隠して声色を変える*13)正しい爆弾は4時30分に着弾しました。放射能汚染区域に進んでください・・・」
司会「赤は自分の世界に入っちまったな」
赤「・・・なおサンドウィッチは汚染されていません*14

出演者の会話を見ていて思ったのですが、この番組が成り立つ前提として「広島と長崎の二箇所に核爆弾が落とされたことは皆知っている」と「二重被爆者の存在はあまり知られていない」の二つがあると思います。
正解の解答が出たときに笑いが出たのは「まさか人生に二度も核を落とされた人が居るわけが無い」という意識が多くの人にあったからでしょう。二重被爆者をバカにしているわけではないと思います。
そもそも、このクイズのお題は「世界で最も不幸あるいは幸福な人とは?」です。正解として二重被爆者の方を採りあげることは問題ではないでしょう。それを題材にウケをねらう、といっても被爆者を嘲笑するのではなく、とっぴな発言で笑いを取るのが趣旨のようです。
むしろ、後半の解説とかがいい加減ではない点からして、番組側は被爆者の話についてそれなりに調べているようですから、そこまで皆して目くじらを立てることではなかろう、と私は思いました。まぁ、気に障る人は気に障るのでしょう。
むしろ最後の30秒の笑いどころが理解できなかった自分が悔しい(何回か聞きなおして前後と参照してちょっとは理解が進んだが、まだなんか訳がしっくりこない)。
ちなみに、出典忘れたけどこんな名言もこの世にはあったり。

イギリスのお笑いは三回笑える。お笑いを見た時。誰かに解説してもらった時。寝る前に合点がいった時

それにしても、ヘイトスピーチって感じはしなかったんだけどなぁ・・・

*1:蹄鉄は幸運のお守りとされている

*2:たどたどしかったのでカタカナにしましたが、漢字で書くと山口彊さん

*3:Holland

*4:ここは"A bomb landed on him and it bounced off"だったらしい。"A bomb landed on him. A big bang stuff"って聞こえた。

*5:核を落とされても鉄道が止まらない日本と何もなくても運休するイギリスという自虐ネタ

*6:これは事実。

*7:"Is the glass half empty or half full?"コップの水が「半分しか残ってない」と見るか「半分も残ってる」と見るかで悲観的にも楽観的にもなれるという格言。

*8:前のグラス半分の水に引っ掛けている

*9:これは"いつもどおりに行動してください"という車内放送の真似だったらしい

*10:今年の冬、イギリスは大雪で鉄道が麻痺していたので、諦めて神頼みするという意味も含んでいる。

*11:雪と本物の爆弾を「降ってる」でかけている

*12:雪の無害性と連合国側から見た原爆投下の正当性をかけている

*13:鉄道ネタで引っ張っているので駅のアナウンスの真似

*14:さっきの水にかけている