危機管理の腕を買って

東京電力といえば、今月末に株主総会があります。
取締役17人(多いなー)監査役2人を選ぶことが主な議題なのですが、取締役候補の一人が面白いです。
東京都副知事という人。
もう8年も東電の社外取締役をやっているのですが、東電がこの人を推薦している理由は「東京都の副知事として都市計画や危機管理に携わるなど、幅広い経験と見識等を有していることから」だそうです。
就任当初の平成15年といえば、原発関連の不祥事で東電の原発が全て停止させられた年です。その後、新潟県中越沖地震柏崎刈羽原発が設計時の基準以上の加速度を食らったときも、今回の東日本大震災のときも、この人は社外取締役でした。
危機管理に携わった経験を買って雇っているというなら、この人はこの間、ちゃんと仕事をしたんですよね?
というか、むしろこの人は今回の危機に際してどんな活躍をしたんでしょうかね?
今回の震災は危機の見本市と言っても良く、しかも東電に関わるものであればそれらはいずれも予防し得たものなのですから、危機管理の腕を買われて社外取締役になったこの方は、さぞかし大活躍をされたのだと思います*1
よもや会議室の置物であったわけはないでしょうから、株主の皆様におかれましては、ぜひともその武勇伝を株主総会で伺ってみてはいかがでしょうか。



あと、会社提案の議題以外にも、402人の株主からの提案として、会社の定款に原子力発電からの撤退を明記するというものも上がっています。

  • 議案内容

以下の章を新設する。
第7章 原子力発電からの撤退
第41条 わが社は、古い原子力発電所から順に停止・廃炉とする。
第42条 わが社は、原子力発電所の新設・増設は行わない

  • 提案の理由

私たちは20年に渡り、原発震災・老朽化・廃棄物等、原発の問題について提案してきたが、取締役は総会のたびに「最大級の地震に耐えられるよう設計、建設」してきた(05年)などと延べ提案を拒否し続けてきた。一方で過去には、活断層の隠蔽・データ改竄などの不正を行ってまで原発の運転を続けてきた。その結果が3月の東日本大震災の惨状である。
巨大津波により肝心の炉心冷却が出来なくなったのを皮切りに、水素爆発、炉心溶融使用済み核燃料プールでの爆発、放射性物質の大量放出、住民非難、計画停電等。「想定外」の言い訳は許されない。
放射性廃棄物についても具体的な処分は進められず、費用がどれだけ莫大になるか不明である。今回の事故が示したように、原発に頼るとCO2は最終的に増えてしまう。嘘にぬり固められ、未来の子どもたちに負の遺産を残し、地元に負担を押し付ける原発からは即刻撤退すべきである。

(寸評)何を言いたいのかは分かるが、もうちっとマトモな文章は書けないものか。
これに対する取締役会の意見も面白いです。

取締役会としては、本議案に反対いたします。
株式会社の定款は、主として会社の組織、事業目的、株式等の基本的事項を定めるものとされております。一方、会社法では、合理的、機動的な事業運営を確保する観点から、業務執行に関する事項については取締役会の決定に委ねることを基本としております。
したがいまして、ご提案のような業務執行に関する内容を定款で定めることは適当ではないと考えます。

ザ・門前払い。
いや、反対意見自体は至極ごもっともで、会社の定款は「何で金儲けをするか」「どんな大枠を作るか」を書くものなので「具体的に何をするか」を書くことはあまりないはずいです*2
株主総会で間違って可決されたりしたら面白いですが、そういうことは無いだろうなぁ・・・


定款について議論するよりも、今回の震災をふまえ、原子力事業は果たしてトータルで黒字なのかどうかを問うほうが、株主の攻め口としてはありだと思うのですがどうでしょうかね。それとも、今回の原発事故を踏まえても、なお、実は東電の原子力事業は黒字なのでしょうか。建設費+運営費+事故の処理費や賠償金を差し引いても黒字であるならば、それはそれで面白いと思いますが。

*1:ケンカ売った形でごめんなさい

*2:違ったら失礼。もちろん、原発の解体を金儲けに使うのであれば「原発解体事業」を定款に加えればよいのですが。