東電の株主総会〜あるいは「大衆はブタだ」がいかに正しいか〜

今日は東電の株主総会がありました。過去最多の9309人が参加されたようですが、衆寡敵せず東電側の主張は全部可決され、株主提案の原発脱退は否決されました。まあ、そんなもんですよね。株式会社なんですから、株主の頭数ではなく、議決権の数が多い方の意思が通るのですから。
とはいえ、頭数が多いためか怒号が6時間も飛び交う楽しい株主総会だったようで、参加者の皆様はさぞや大変だったろうと思います。
6時間怒号が飛び交うだけならまだしも、株主の質問も色々と酷く、半日無駄にした人が多かったのではないでしょうか。以下、つぃった等で拾った株主総会で出た質問をば。
よりマシな例としては、こんなのがあります。

原子力損害賠償法に定められている免責を取締役会で決定するとはどういうことか。福島第一原発の建設は深くリアス式海岸のような形状に掘ってしまったために津波の波高が高くなった人災ではないのか。原子炉建屋の下の汚染水の核種分析を発表しろ。

まあその、会社としては自腹をなるべく切りたくないので免責を求めるのは当然でしょうし、事故以来一貫して天災を主張する東電としては人災ですというわけはなく、核種分析の結果は気になりますが分かったところでどうするの*1、とは思いますが、中身のある質問だとは思います。
中には

企業年金を受け取るのはおかしい。

とか

経営陣全員原子炉に入って死ね

とかいうように、意見というか八つ当たりにエラソーなことほざいて満足したいだけちゃうんかみたいなのも飛び出たようで、つまるところ、我が国のいい年こいた大人がいかに幼稚かということを暴いたような感があります。というか、ウケが良かった質問を総合すると「東電は原発事業から撤退しろ、きちんと補償しろ、免責は求めるな、でも倒産せずに株価を戻せ、経営陣は死ね」になるので、建設的な議論など望むべくも無いのかもしれません。
ちなみに、会社側は大株主からの委任を受けており、出席者の株の総数130万株あまりのうち107万株を最初から抑えていたので、どんな動議であろうが議長の一存で総会を進めることが出来たのだそうです。6時間も株主総会を続けさせてもらえたのは、会社側のせめてもの目こぼし、といったところなのでしょうかね。舞台に立ったことのある方は分かると思いますが、舞台上からは手前の席の人くらいしか顔が判然としません。直接顔も見えず*2、危害も加えられる心配もなく、更にどんな意見が出ても自分の意に沿わなければ却下できる立場なら、何を言われても屁とも思わないのではないでしょうか。


では、自分の意見が通らない株主は、泣き寝入りするしかないのか?
そんなことは無いと私は考えます。
株主総会は、仮に会社側の意向のみが通る場にせよ、あくまで「株主の意見を聞き、議論した結果、生まれた決議」という建前をとります。議事録は残りますし、記者会見では明らかにならないことでも開示される場合があります。
今回の総会では、従来の記者会見では明かされなかった会社の広告費について金額(116億)が出た一方、役員一人一人の給与については出ませんでした。個人のプライベートに立ち入らなければある程度の数字は出るのです。また「原子力発電からの撤退を求める株主提案を否決した後、再び原発事故が起きたときは、あなた方に責任がある」という発言が出たそうですが、このように、責任の在り処を端的に示した言葉が議事録に残ることも、重要だと思います。
そういった、数字であるとか言質をとるとかだけでも、意味があるのだと、私は考えます。「お前ら全員死ね」と言われることと「次やったらお前の責任な」と言われること、どちらが重く感じられるでしょうか。
もう一つ、株主たちは、次の総会にも必ず出席することが肝要です。東電の株主たちは、層でない人たちよりは、遥かに経営に口出しできる権利を持っているのです。どうかくれぐれも、経営への監視を怠りなきよう。そして、次の総会ではより実のある議論が出来ますように。

*1:というか、マスコミの人たちは記者会見で聞かないのかしら。

*2:もちろん、顔が見える前列には会社側の人間が並ぶ。