出前講義

来週11日に学部の1年生向けに出前講義をすることになりました。なんでも、博士課程への進学率を高めたいので、1年生たちに博士課程は楽しいよという話をしてほしいのだそうです。
研究そのものは楽しいのですが、博士課程は別に楽しくもなんともないんですけど。試しにパワーポイントを作って見せたところ「学部1年生なんて高校生も同然なんだから式なんか使っちゃダメ」というツッコミが入り、作り直しとなりました。いくら前提知識が高校生も同然とはいえ、理系の博士志望者を増やす企画なんだから、式の一本でも入れてはいかんとは、舐められたものです。
だいたい、サークルの勧誘じゃないんだから博士課程の楽しい面だけ紹介してもダメだと思うんですよね。生活習慣とか年間スケジュールとか人生設計とかを考えずに博士課程に飛び込んだってろくなことにはならないのですから。人によっては奨学金を受けており、修士や博士まで進学すればその分だけ学費もかさみます。日本の奨学金は基本的に貸与なので、在学期間が延びるというのは、社会へ出たときの借金が増えることに直結するわけです。就職先だって修士と博士で初任給が一緒なら、修士で就職した方が生涯所得は上がります。修士と違って成果が出なければ博士号はもらえないわけで、その辺のシビアさと言うか殺伐とした面も見せて、怖いもの見たさで来る人を捕まえるくらいじゃないと、単に苦しい思いをする学生が増えるだけだと思うんですよね。
私自身は研究が楽しいので博士課程に進んでよかったと思いますけど、じゃあ研究が楽しいと思える人が学生の中にどれくらいいるかっていうと、5人に1人もいないと思うのですがいかがでしょうか。