塩見岳(下)

この日はあいにくの雨となりました。本当はもう一日縦走をして、農鳥岳まで行こうかと計画していたのですが、大事を取って下山することにしました。山の雨は尾根に出ると風が強くて動きづらい一方で、景色も良くなく雨宿りもできないので、移動それ自体に意味があるのでなければ外へ出ても仕方ないのです。しかも、北岳の周囲は川の上流で土砂崩れが起きやすく、大雨が降るとすぐに通行止めになってしまいます。下山できなくなるのが一番怖いので、なるべく確実に下山する必要がありました。
熊ノ平小屋から一番早く下山できるのは、三峰岳という山を越えて両俣小屋という山小屋へ下り、そこから林道を歩いてバス停まで行く、というものです。バスの時刻は事前に調べてあったので、コースタイムから逆算して、ちょうどバスに間に合うよう山小屋を出発しました。
ところが、昨日と同じくコースタイムの表記が間違っているのか、途中の2時間と書かれた区間で3時間もかかってしまいました。ほかの区間はコースタイムどおりなので、この区間だけがおかしいようです。
そんなわけで、地図に文句を言っても仕方がないのですが、山歩きに時間を取られてしまいました。バスに間に合わないと思ったら、両俣小屋のご主人曰く、雨の影響でバスは運休になったとのこと。それでも山小屋にとどまっていても意味がないので、甲府行きのバスが出るところまで徒歩で降りようということになりました。結局、途中で再度下山の方向を変えて長野側へ下りることにしました。というのも、時間的に山梨側へ下りていても最後の甲府行きバスには間に合いそうもないのに対して、長野側へ下りるバスならば運休さえしていなければ間に合いそうだからです。仮に運休していても近くに山小屋があるので、そこで一晩明かせます。そのような判断で北沢峠という長野と山梨の峠を越える林道を進むと、どうやら長野側はまだ動いていたのです。当初の予定からはだいぶ外れてしまいましたが、紆余曲折を経て無事に下山しました。

今年は豊作になるのでしょうか。