三重日記二日

新鹿と書いて「あたしか」と読む。
思わず「しんろく」と音読みしそうになるところを訓読みにするんだから、粋です。
新鹿は高台に駅があり、そこから急坂を一気に下ると海沿いの通りに出るという、映画のワンカットみたいな風景が広がる、素敵な街です。
海岸線も注文どおりの弧を描き、東に向いた湾には二本の川が両脇から注いでいます。
そこにテントを張って、二泊します。
なんというか、最高な夏になる予感がします。

このべらぼうな暑ささえなければ

真夏の太陽というのは、こうも残酷に砂浜を照らすのでしょうか。
3張りテントを張っただけで、もおやる気が起きなくて海より先に海の家でかき氷のお世話になりました。
海岸の北の端、道路の向かい側にある、さかもと食堂(だと思う。記憶違いだったらいやだな)というところのカキ氷なのですが、
これが200円かというくらい景気よく氷を削ってくれます。
サイズ的には私の大学祭で売っていたカキ氷のスチロールのコップとまったく同一なのですが、入っている氷の量が圧倒的に違う。
まず、削った氷をコップにすりきりいっぱい入れます。
次に、それをテーブルでとんとんと叩き、氷のかさを下げます。
これを繰り返し、氷を目いっぱいコップに充填します。
そこへ、シロップをかけます。バリュエーションは豊富です。
そして、コップの上にさらに氷をつけたし、コップのかさの一倍半くらい標高がありそうな氷の山を作り上げ、それを手で潰して整形してシロップを満遍なくたらします。
私は、お店のおばちゃんの手が清潔であると信じているので、手で整形されても特に抵抗は感じません。
むしろ、整形しないと食べられないくらい氷をつんでくれたおばちゃんの気前のよさに得した気分になりました。
私が知りうる限り、三重県出身者は気前がいい人が多いのですが、お国柄なんでしょうか。
で、何はともあれカキ氷を食べきって冷えた身体を、海に漬けます。
海は透明度が高く、黒潮が近いせいなのかは知りませんが、暖かいです。
もちろん、体温や気温よりは十分冷たくて気持ちいいです。
そして、海水浴の後は、川の水に浸かって潮を落とすという、変則的な楽しみ方もできるところが、この砂浜の面白いところ。
海の波が荒れているときとかも川で泳げるのですから、荒天時以外はいつでも泳げますね。
さて、たっぷり泳いだあとは、夕ご飯にしましょう。
夕闇が迫ります。
「明かりは?」
「大丈夫だよ、周りの明かりで十分見えるよ」
(二時間後)
「真っ暗じゃないか!」
「携帯のライト使おう!」
・・・・・・計画性無いぞ〜。
この砂浜には、この日、私たちのほかにも十組くらいテント宿泊者が来ています。
私たちの右隣はどこかの大学生のご一行で、ミニコンポからサザンオールスターズオレンジレンジを垂れ流してちとうるさい。
お向かいに少し大きめの家族連れが来ていて、小さい子がうろついている。
みんな、ランタンの下で楽しそうに花火で遊んでいるそばで、私たちはさびしく早寝を決め込んだのでした。