ハイキング

バニャ・ルカ市の南にある丘へ、IAESTEの人々とハイキングに行ってきました。
人口20万とはいえ、谷間の街道に沿った細長い町なので、そこから外れると途端に人家もまばらな山の中に入ってしまいます。
市の中心を出たのが10時半で、最初の目的地である独立記念モニュメントに着いたのが12時。
広葉樹に覆われた丘の上に、突然それは姿を現します。
整地された丘の頂上に建つ、白い肌の棺。
手入れの行き届いていない、黴が生えところどころ割れたコンクリートと、スプレーに落書きされた街灯の階段を上ると、正面にはユーゴスラビアの旗を掲げた裸の男性のレリーフがあります。
横に回ると、雑草が生え始めた側壁にはナチスドイツによる侵略と抵抗の歴史のレリーフ
後ろ側は土が現れ、そこからモニュメントに登れるようになっています。
表面は白いコンクリートの板。手入れが行き届いておらず、ところどころ禿げており、歩くとごとごと音がします。
このモニュメントの面白いところは、正面が市街ではなく北を向いている点。ドイツの方角です。
なるほど、侵略者の北側を志向しているそれは、角度によっては戦車、あるいは大砲に見えなくもありません。
同じ民族が宗教や文字によって別々のアイデンティティをはぐくみつつも、戦後50年近くにわたってユーゴスラビアであり続けるためには、侵略者に対する抵抗という歴史が不可欠だったのでしょう。
そして、それがもはや朽ち果てた廃墟のようになっているのも、つまりはそうして束ねる必要もなくなり、内戦という新たな歴史のページが加えられたからなのでしょうか。
モニュメントの東は市街地、西は昔ながらの農村地帯。
その境目を進む抵抗の戦車は、私たちに何を語りかけてくれるのか。少し考えさせられました。