情報の落とし穴

昨日、神保町に寄ったついでに、本を買ってきました。一冊は今更ながら岩波文庫のカヴァレリア・ルスティカーナ。12月に公演をするというのに、未だに読んでいなかったというのはある意味失態。
もう一冊は何を買おうかと迷った挙句、ちょっと古いですが先日亡くなった江畑謙介氏の著作、「情報と国家」にしました。2004年の本なのでちょっと古いですが。
ちなみに、江畑謙介って人は湾岸戦争イラク戦争などで、よくNHKに軍事評論家として出演していた人です。日本のありがちな評論家が自信の知見をひけらかして外野からああせいこうせいと御託を並べることが多いのに対して、この人は知っていることを分かりやすく説明する、知識の伝達者としての仕事をストイックにこなしていた印象があります。
本書は、軍事評論家という仕事柄、また、出版年からもわかるとおり、湾岸戦争からイラク戦争に至る中東情勢、及び北朝鮮のミサイル関連を主に例として取り上げつつ、日本語における情報という言葉の曖昧さ、その情報を扱うことの難しさを指摘するものです。「国家」とタイトルにはありますが、私たちの日常においてもこれらの課題は当てはまりますから、軍事というとっつきづらいテーマではあっても、一般に言えることが多く、勉強になります。
本書に沿うならば、日本語の「情報」に該当する英語としては「Information」と「Intelligence」の二つがあるそうです。前者は直接得られた「生の情報」であり、後者はそれらを元に手に入れる「解析された情報」といえるでしょう。虚報や価値のないものが含まれているかもしれない生の情報から、確からしいものを取り上げて考えることで解析された情報を手に入れるわけです。
わかっちゃぁいるけれど、それを混同してしまうのが私たち。出所が怪しいインフォメーションでも、自分に都合がよければつい鵜呑みにし、あるいは重大なインテリジェンスさえもついうっかり見過ごしてしまうのです。
私たちがいかに情報に惑わされるのか、はたまた、国が道を踏み誤るのか、私たちに日ごろなじみのない戦争を切り口に教えてくれる本でした。
著者のご冥福を心からお祈りいたします。