投資と金儲けと

電波伝搬の講義の期末レポートが「1.講義の内容を全部まとめる。2.講義で出た宿題を全部まとめる。 3.講義に合致する新しい演習問題を考えて自分で解答する。 4.講義の内容が自分の研究にどのように使えるか書く」とかいうデスマーチで今週の半分が潰れてしまいました。残りの半分は再実験ですが、こちらは軌道に乗りました。後はきちんと回数こなして良い結果を得るだけ。来週も締め切りがあるけど、まあ何とかなるさ。デスマーチじゃないもの。


話は変わりますが、というかこちらが本題なのですが、高校の同期が「MFE*1取りにアメリカ行ってくるぜ!投資銀行とか運用会社とかでバリバリ働くぜ」と言っていたので、餞別がてら、先日の特別講義に原丈人という方がゲスト講師でいらしたときの感想を書こうと思います。


原丈人(はら じょうじ さんと読みます)は、ご本人によれば「中南米で考古学者として発掘をしたいがお金も時間も無い!そうだ!シュリーマンみたいに実業家になればいいじゃないか!」という発想で、アメリカ留学中に光ファイバディスプレイの会社を興した方です。その後、会社を売り、その資金を元手に情報通信技術のベンチャー企業を育成する事業持株会社を設立、大成功を収めて現在に至る、という破天荒な人生を送られた方です。
ちなみに、法学部卒で渡米し、経営学修士を修了した後、工学修士を修めるという変わった経歴です。途中で国連フェローをやったりしている割には、最初の会社を興したのが29歳の時だそうですから、バイタリティのある方はすごいです。
で、この方が工学部の大学院にいらして、色々語るわけです。


原さんは、ご自身の経歴にもあるように、最初は自分でベンチャー企業を立ち上げました。その後、様々なベンチャー企業の設立、成長に立ち会われたために、新しい技術を生み出す条件のようなものを感じられているようです。
その条件の一つが、少人数であること。
規模が大きくなると保守的になり、新技術の開発に投資しなくなります。特に、最初の事業がヒットして利益が生まれると、自分たちに投資してきた人たちに配当、すなわちリターンをもたらさねばなりませんから、損失に繋がりかねない開発が忘れられがちになるようなのです。
特に、近年ではより早く利益を得るために、当初の予定よりも開発に時間がかかったり、開発予算が予定を超過したりするような現象に懸念を示す投資家が多いそうです。
実際に、起業の案件は年々「小さいネタ」になる、すなわち、見通しを立てやすいものになる傾向があるそうです。起業は、収益が上がる会社よりも途中で潰れてしまう会社の方がはるかに多いですから、なるべく外れくじを引きたくないという投資側の心理は、分からないでもありません。ましてや、新技術の開発ともなると、投資する側はその技術がどれほどの可能性を持っているのか、理解しづらいですから、分かりやすい物に人気が集まるのでしょう。
仮に起業がうまくいき、事業が軌道に乗っても油断はできません。一旦利益を上げて株式を上場したら最後、株価の維持のために余計な出費を惜しむあまり、新しい波に乗りそびれて市場を去ってしまうケースも少なくないのだとか。
そういう状態が今でもアメリカにはあるのだそうです。かつてベンチャーキャピタルと呼ばれた投資機関も、短期的な株の売買などの方が短期的には成果が出るので、何年も腰をすえて会社を育てる機運が減ってきているのだとか。
そのような認識の元、一言で言えば「金転がしだけだと最終的には社会が行き詰まるぞ」みたいな話をされていました。
本当か嘘かは分かりません。実際にアメリカの環境がどうなっているのかは分かりませんが、きちんと新しい技術を生み出して社会のパラダイムを変えて行かないと、社会全体が停滞する、というのは本当だと思います。


渡米する彼には、ぜひとも新しい技術を何年もかけて育てていくような人材になって欲しいものです。

*1:Master of Financial Engineering: 金融工学修士と訳せばよいのかな?