耳(と日本の医療)がぶっ壊れていた日

富士山を下っていく最中に、両耳に違和感を覚えていました。
よく列車でトンネルに入ったり飛行機に乗ったりして、気圧が変化したときに鼓膜が引っ張られる感じのするアレです。
アレの強い奴にかかり、降りてくる最中ずっと耳抜き*1をしていたのですが、左はどうやら上手くいったようでも、右が全く直らない。
山頂で寒い思いをしていたので、さては鼻汁でも詰まったかと思っていたのですが、一晩たったこの日も耳の張った状態が治らない。
仕方がないので耳鼻科に行って治してもらおうと思ったのですが、休日診療をしている医院がなかなか見つからない。
例えば、東京の休日・夜間診療情報というサイトに行けば、各地域の医師会にリンクが張ってあり、その地域ごとの医師会が休日診療をしてくれる医院を教えてくれるのですが、なぜか耳鼻科と眼科は数が少ない。っていうか、殆どやってない。
なぜか。その答えは東京都耳鼻咽喉科医会東京都眼科医会のサイトにありました。
まあ、つまるところ、内科とか小児科とかの初療施設は各地域の医師会が、耳鼻科と眼科は別の医師会が休日診療のシフトを組んでいて、連携が殆どできていないということで。
更に言えば耳鼻科は都内で6件、眼科に至っては1件しかやっていないということで。
一応「ひまわり電話サービス」なる最寄の医院を教えてくれる電話サービスがあるのですが、利用しようと電話をかけても常に通話中であるため、なかなかに情報が手に入らない。
とはいえ、右耳が殆ど音を拾わないのをどうにかしたい一心で、それらの不便*2を乗り越えた結果、最寄の耳鼻科を発見し、藁をもつかむ思いで炎天下お出かけ。


着いたところは普通の町のお医者さんといった風情で、応対に出たのは白衣のお婆さま。診察してくれたのはその夫にしてこの道何十年といった感じのお爺さま。夫婦共白髪、二人きりの医院がこの日、都内で6件しかやっていない耳鼻科の一軒だったのです。
そのせいかは知りませんが、待合室はそれなりの混み具合であり、五分に一度は電話が鳴る始末。受付からは「5時まで診察はしておりますので4時までにいらしてください。昼休みはありませんのでいつでもどうぞ」という通りの良い声が聞こえてきます。
・・・ってちょっと待て。昼休みないんかい!
二人っきりだよね?ここ、おじいさんとおばあさんしかいないよね?
そりゃ、都内に6件しかやっていなけりゃ、それなりの数が来るだろうけど、昼休みないの?


なかなかに不安な戦況でしたが、とりあえず私は私の耳を治してもらう必要があります。
で、おじいさん先生は、おもむろに太い音叉を鳴らして私の脳天に突き立てます。「どっちにきこえます〜?」
不思議なことに、調子の悪い右耳から聞こえます。
「そうでしょうそうでしょう」と、やや嬉しげに微笑みながら、先生は私を聴力検査の機械にかけます*3。で、気になる結果は。
「両耳とも浸潤性の中耳炎ですね」
というわけで、左耳も無事なのではなくて「右の方がより酷いから左が良く聞こえるだけ」でした。
鼻から強制的に空気を送り込む管を押し付けられて、左はなんとか元に戻りましたが、右はうんともすんともいわず。
「あまり強引にやっても鼻を傷めますからねぇ。しばらく様子を見て、ひょっとすると鼓膜を切って中の液を抜くことになるかもしれませんねぇ」
という恐ろしい宣告をうけ、抗生剤その他の処方箋を貰って私の診察は終わり。
おかげさまで、モノラルでさえない状態*4から、何とか左耳モノラルの世界に復帰してこれました。なるほど、確かに帰り道は行きよりもだいぶ賑やかです。
さて、明日以降、私の右耳が治ることはあるのでしょうか。

*1:鼻をつまんで鼻から息を吐き出そうとするやつ。上手くいくと耳と鼻をつなぐ管に空気が通って、中耳の気圧を調節できる。

*2:何でユーザフレンドリじゃないんだろう。

*3:後で知ったのですが、病状によって「外の音を拾いにくい側の耳」が骨伝いに音を良く拾う場合もあるのだそうです

*4:両耳の周波数特性をグラフ化した紙を見せてもらったのだけど、見事に両耳ともぶっこわれており、特に右耳は中耳が完全に詰まっており、ものの役に立っていない状態だった。