風向きの問題

※この日記は紛らわしい記述が多いです。


世の中には、なぜか「最悪の事態を想定している人」だけではなく「最悪の事態を期待している人」が居るんじゃないかという気がして仕方がない今日この頃です。
で、やたらめったらデマが飛び交ってるので、ちったぁツッコミを入れちゃろうかと、放射線は距離の2乗に反比例するとか、被爆した際に飲むヨウ素剤の代わりにイソジンは意味ないって話をしようと思ったのですが、資料集めの過程で気になるものを見つけたので、「最悪の事態を期待している人」に嬉しい内容の日記を書くことにしました(何


今朝、午前6時前、北茨城市で通常の110倍の放射線を検出したそうです。このことについては「福島第1原発では同日午前6時14分に2号機で爆発音がし、放射能を封じ込める原子炉格納容器の一部が損傷した可能性があるとみられているが、同5.575マイクロシーベルト測定はこれより前の時刻だったため、県は、2号機の爆発音と直接の関連はないとみている。」ということで、オフィシャルには原発とは無関係だそうです。


ところが。
データ元:
茨城県が測定した圏内の放射線量
東電の発表をCSVに落とした三重大奥村教授のサイト
両者をグラフ化すると衝撃の事実が!(嘘



福島第一原発で観測したデータ(縦軸はマイクロシーベルト)。

茨城県が観測したデータ(縦軸はナノシーベルト)。



・・・茨城県のデータが東電のデータに先行してる気がしないでもないでしょ?
他の人がいつこれに気付くかは知りませんが、たまたま原発反対派の人だったら、ひょっとすると「東電はわざと発表を遅らせている」と大騒ぎになるやも知れません。


種を明かすと、放射線として計測しているのはガンマ線、すなわち、電磁波です。電磁波は環境によって強度が10倍単位で平気で変動するので、急に高い値が出たからといって、必ずしも出所の状態が関係しているというわけではないのです*1。携帯電話など、無線通信で利用している電磁波も、アンテナの方向特性に従い、向きによって強度が1000倍以上平気で変わります。
さらに、放射性物質は風に乗って流されるので、放射性物質の放出もとの風下か風上かで放射線の観測値は大きく変わります。従って、通常より100倍ほど大きな値を観測しても、今回はおかしくないのです。他のモニタリングポストで、同様に先行して線量が増えている観測局がないので、茨城圏内だけ、風向きか何かで値が上昇したのでしょう。
ちなみに、形が似ているように見えるだけで、相互相関を取ってみるとあんま関係ないって結果が出ます。従って、このグラフを転載して東電をdisるアホウが出たら全力で哂うぞ。


4月2日追加。
2号機でベント操作(3月15日0:02)
2号機で爆発音するとともに、サプレッションプール(圧力抑制室)の圧力低下(3月15日6:10)。同室に異常が発生したおそれ(3月15日6:20頃)
4号機で火災発生。(3月15日9:38)事業者によると、自然に火が消えていることを確認(3月15日11:00頃)
とあるので、東電が観測していない時間帯に何かのイベントで放射性物質が飛散した可能性はある。特に2号機の爆発音が気になる。


予断ですが、福島第一原発北茨城市は直線距離にして50キロは離れてます。福島第一原発のデータの単位がマイクロシーベルトであるのに対して、茨城のデータは値が1000分の1となるナノシーベルトです。更に100キロ以上離れた東京が危険な状態になるには、どれほどの放射性物質の放出があればよいのか考えれば、まだ東京が焦る段ではない、という風に私は考えております。
つーわけで。突然でかい値が出ることが問題なのではなく、大きな値がいつまでも出続けていることが問題なのではないかと思う次第です。

*1:電気系の端くれとしては「伝播環境によって値が100倍変わる」という主張には、特に違和感を持ちません。