真夏の電力需要

計画停電は、寒波さえ来なければみなの節電でどうにか回避できるようになって来ました。しかし、今夏の電力需要については不安で仕方ありません。
過去の電力需要(リンク先PDF)のなかで最大だったのは2009年夏の6430万[kW]だそうです。ここ数年の平均としては6000万[kW]といったところでしょうか。一方で、東電の発電能力(リンク先PDF)は6448.7万[kW]です。つまり、全ての発電所が点検や故障などによる休止をせずに全力稼動できれば、過去最大の電力需要をまかなえる計算になります。
原発による出力は、福島第一の469.6万[kW]、福島第二の440万[kW]、柏崎刈羽の821.2万[kW]の合計1730.8万[kW]となっています。福島第一と第二は再開できないでしょうし、柏崎刈羽も2〜4号機が止まっています。福島第一、第二が復旧しなければ、東電が持っている原発で今夏に発電できるのは柏崎刈羽からの491.2万[kW]だけ、ということになります。
他にも、太平洋岸の火力発電所は今回の地震で人知れず被災しているので、広野、常陸那珂、鹿島、東扇島の各火力発電所にある8台の発電機は発電できない状態です。これら全てが夏までに復旧すれば僥倖ですが、一つ復旧が遅れるごとに100万[kW]単位で穴が開くことになります。一つも復旧しなければ740万[kW]発電できないということに。


以上を足し合わせると、東電が今夏に発電できるのは5209.1万[kW]以下ということになります。特に、停止した火力発電所の被災状況が詳らかではないので、実際にどれほど復旧するか不明ですし、全ての発電所が全力を出せるわけもないでしょうから、ざっくり東電自身が発電できるのは4000万[kW]としておきます。


他所からの応援はどうでしょう。
東京電力は、電力卸売りの電源開発日本原子力発電から電力を買っています。内訳は、電源開発の700万[kW]*1と東海第二原発の110万[kW]です。
他にも緊急時の応援として、東北電力中部電力からの融通もあります。今回、東北電力も被災しているので、期待できるのは中部電力からの100万[kW]だけでしょう。
以上を足し合わせると、910万[kW]以下ということになります。特に、東海第二は原子炉なので、再起動に時間がかかり、夏までに間に合わないかもしれません。そうすると、どんなに頑張っても800万[kW]ということになります。


そうすると、東電が供給できるのは4800万[kW]となって6000万[kW]以上の需要に追いつかなくなります。ベストコンディション*2を仮定して、ようやく需要に追いつくかどうかです。真夏の首都圏大停電、熱帯夜なのにクーラーなしという惨事も有り得ます。
平成2年の電力需要ピークが5000万[kW]なので、頑張って節電すれば達成できない数字ではないですが、やはり不安はぬぐえません。


では、どうすればよいか。
計画停電は、あまりよい解決策とも思えません。先週の状況を見ると、停電によって店舗が営業できなくなったりして、経済への損害が大きすぎる気がします。現代は、電気が止まるという事態に弱すぎるようです。
すると、今すぐ出来ることは「節電する」しかありません。真夏ならば、冷房の設定温度を26度にするだけでもだいぶ変わるでしょう。オフピーク通勤や、むしろ欧米並みの1ヶ月の夏期休暇をとらせて50Hz圏から人が出ていくのを期待するかというのも考えられます。
あと、これは私の妄想ですが、山梨や静岡の富士川以東を思い切って60Hz圏にしてしまうというのもありだと思います。どういう配電状況なのかは分からりませんが、今から突貫工事すれば、これくらいは中部電力に渡せるかも。
逆に、60Hz圏の発電所も同期発電機なら、回転数を変えれば50Hzで発電できるから、突貫工事で配線して中部電力発電所のいくつかを50Hz圏に組み込んでしまう*3という手段もあります。
この二つは多分、相当難しいと考えられます。まあ、つまるところ、50/60[Hz]の問題を解決しないと根本的には何も解決しない、ということですな。

*1:電源開発の設備のうち、50[Hz]で発電できる設備が詳しく分からないので、間違ってるかも。

*2:被災した火力発電も含めて全ての発電所が全力稼動

*3:と、気楽に書いたが、多分3ヶ月じゃ無理。