読売のケチぃトリミング
「日本で公表されない気象庁の放射性物質拡散予測」なんて題名で、読売がけったいな記事を写真つきで載せております。
早い話、「ドイツ様は写真みたいな感じに放射性物質の拡散予測とか立てて公表してるのに、気象庁が公表しないのはけしからん!」という内容。
で、件のドイツ気象局のウェブサイトはこちらでして、確かに読売の記事にあるようなイラストが載っている。
・・・ん?
読売が載せたイラストはこれ↓です。
ドイツ気象局が載せたイラストはこれ↓*1。
左の枠に囲まれた説明が抜けてますね。
枠の説明には、こんなことが書かれています。
放出された放射性物質の相対的な分布。
(カラーバーの説明)
濃度がわずかに薄まっている
濃度がそれなりに薄まっている
濃度がかなり薄まっている
重要な注意:放出元の濃度が不明であるため、この図は現実の空気中における放射性物質の濃度を結論付けるものではありません。仮想的に放出された物質が、天候によってどのように原子炉から分布し薄まったかを示しているだけです。
つまるところ「いつ、どれくらい、どんな放射性物質が福島第一から出るかは分からないけど、仮にこの時間から飛んで行くならこんな感じ」といった程度の意味しか持っていないのです。
それもそのはず。このイラストは、ウェブサイトの説明によると「ある時間に放射性物質が放出されたと仮定した場合の、6時間後との分布予想」なのです。まず放出されること自体が仮定の話。
で、泣く子も黙る読売新聞様は、そういう情報は特に書かず、注意書きとかは丁寧に切り取ってウェブサイトに載せたようです。
比較してみると一目瞭然。
随分とケチぃトリミングだと思いません?
ちなみに、散々せっつかれて気象庁が公表した資料によると、九州までかかっている部分が10兆分の1、関東上空にかかっている部分が1000億分の1らしいので、よっぽどのことが無い限りはこの図が何か*2を意味する物ではないようです。勿論、隠し立てするのは良くないのですが、この場合はまずい情報を隠しているというよりは、公表しても意味が無さそうだから公表しなかった、というほどのものではないかと思います。気象庁の人たちも「こんなもん公表してどーするよ」と思ったのでしょう。実際、飛んでるかも分からんものを「飛ぶとしたらこんな感じ」と言われても、どうしようもありませんしね。多分そういう情報は、もっといっぱいあると思います。
そういう価値の低いと思われる情報すら丁寧に説明を書いて公開する、というのはドイツ気象局の褒めるべき点かも知れません。まあ、あちらは日本よりも更に情報が少ないので、仮定の上に予想を重ねた情報であっても、日本よりは価値があるのかもしれませんが。
そういう視点に立てば、読売新聞が図の説明を消したのも、実はあの図の色わけが欲しかっただけで、色の意味とか条件とかは、色塗りされた日本地図ほど重要じゃないと思ったからなんでしょうね。