ロケットの打ち上げとパブリックビューイング

パブリックビューイング」とカタカナで書くと分かりづらいですが、要は一般公開です。ロケットの打ち上げを全国各地でテレビ中継しようという企画です。
本日、陸域観測技術衛星「だいち2号」を載せたH-2Aロケットが打ちあがりました。私は都内の博物館で中継を見てきました。「はやぶさ」などの有名な衛星と違い、それほど注目を集めていないせいかもしれませんが、100人ほどの会場に5分の入り。
中継と言ってもテレビ局が生放送するのではなく、JAXAが撮影したものをネット配信しており、それを博物館で放映するという形です。
ふと気になって携帯電話のワンセグNHKを見たところ、こちらもお昼のニュースで打ち上げの模様を中継していました。よくよく見てみると、NHKの方が時間が先に進んでいます。NHKの画面には秒読みの数字がテロップで出ているのですが、そちらの方が会場の中継の秒読みよりも30秒くらい早いのです。そして、会場の中継よりも30秒早く打ちあがりました。
もちろん、この日打ち上げるロケットは一発なので、会場の中継の方がテレビよりも遅れているという計算になります。会場が打ち上げの瞬間を固唾をのんで見守っているときには、もうNHKの中継では打ちあがったロケットが白煙をたなびかせて飛んでいるのです。一見すると不思議ですが、種明かしは簡単。
NHKは自分たちの中継の機材を持ち込み、独自に撮影して渋谷の放送センターへ送信しています。そこで秒読みのテロップなどを加えて全国へ再送信するわけです。このとき、昔のアナログテレビと違いデジタルテレビではいくつかの処理がなされています。まず、撮影した動画を圧縮しています。動画は撮ったものをそのまま送信しているのではなく、いくらかの処理を経ているわけです。その処理は全部専用の機材を使います。各家庭のテレビまでは放送専用の回線(つまりテレビの電波)を使っているくらいです。
これに対して、いわゆるネット中継では恐らく撮影した動画を汎用のコンピュータが取り込み、そこで処理を加えてインターネットの回線で放送局のサーバへ送り、そのサーバへ視聴者が中継を見に行くという形式をとります。つまり、処理する機材は専用の物ではないばかりか、中継の情報が置いてあるサーバ自体もネット中継以外の用途にも使えるものであり、しかもインターネットの回線にはネット中継以外の物も流れています。
ロケット打ち上げそのものは面白かったですし、無事に事故なく軌道に衛星が入ったようでとても安心しています。それとは別に、今回の中継ではこの専用の機材と回線を使うか、汎用の機材と回線を使うかの時間差が見えて面白かったです。